母は私が目立つことを極端に嫌った
私は幼い頃 大人しく内気だった
同級生には 居るか居ないかわからない人
そんな風に言われていたぐらいだ
だから そんなに目立つ行動もしていなかった
ある年の夏
田舎では 盆踊りが賑やかに開催される
会場となる小学校のグラウンドに櫓が組まれ
小さな桃色の提灯が 吊り下げられた
私は浴衣を着るのが嬉しくて盆踊りへ出掛けていた
いつものように 踊っていると
太鼓を叩いていた青年部の若者が
私を手招きをして 櫓の上で踊るように言った
言われるままに櫓へ登り その日は最後まで櫓の上で踊り続けた
とても楽しかったのを覚えている
しかし 家に帰るや否や母はすごい剣幕だった
どうして櫓の上に上がったのか、と叱られた
私は叱られている理由がわからず戸惑う
何がいけなかったのか 理解できなかった
母は近所の誰かに 私が櫓の上で踊っているのを聞いたのだろう
私は子供心に 選ばれて櫓に上がり踊った事を
誇らしい気持ちだったのに 母の叱責で台無しになる
大人になった今でも その情景を思い出すと
切ない気持ちになる
幼い自分に 可哀想に大丈夫、あなたは何も悪くないよ
そんな言葉をかけてあげたい